ホウセンカの想い出
お盆休みいかがお過ごしでしょうか。
コロナウィルスの影響は大きいものの、子供たちが虫取り網を持って駆け回る姿を見るとホッとします。
さて、今からちょうど100年前、1920年頃の子供たちはどんな夏を過ごしていたのでしょうか?
(塔本シスコ「想い出 ホウセンカ」1994年)
「夏休みに、ツメに、赤くそめて たのしみます
学校が はじまってから だれがきれいにそまっているのか
たのしみです。先生から、きたないから ゆびをきってしまえと
よくおこられました」
なんと、シスコは庭のホウセンカでナチュラルなネイルを楽しんでいたようです!
爪の染め方は「カキハッパ(柿の葉)ホウセンカをつぶしたのを ツメにのせて むすぶ」。
そして、「五回ばかりで」とあるので、手順を五回繰り返して、時間をかけて染めたのでしょう。
学校が始まって、友達と染まり具合を競い合ったり、先生に「指を切ってしまえ」と怒られたりするのは、今と変わりませんね!(笑)
石牟礼道子さんの著書『椿の海の記』の中にも、
「こないだ、とびしゃごの花と葉を摘んで、石の上でたたいて、明礬の粉をふりかけて、ひと晩ひとつひとつの爪の上に乗っけて、紅絹(もみ)の布でくくりつけてもらって染めた爪が、きれいな朱色になって、先の方にのびているけれど・・・」
という記述があります。
「とびしゃごの花」とはホウセンカのこと。
『椿の海の記』は昭和初期、1930年前後の水俣の暮らしを描いた物語です。
こちらはミョウバンの粉や紅絹の布を使うので、少々「大人の手」が入ってるようにも感じますが、やはり少女向けの夏の遊びのようです。
石牟礼道子さんは熊本県天草市のご出身、塔本シスコは熊本県宇城市の出身ですから、熊本県でホウセンカが咲く場所には、この遊びが少しずつ進化しながら少女たちに受け継がれていったことがわかります。
実は、私もシスコと一緒にホウセンカで爪を染めてみたことがあります。
柿の葉がなかったので、指をラップで包みました(風情がない!笑)。
手順を繰り返すうちに、黄色⇒オレンジ⇒朱色に染まりますよ。
ネイルカラーの歴史を調べてみると、なんとあの楊貴妃もホウセンカで爪を赤く染めていたとか!古式ゆかしい「ホウセンカネイル」ぜひおためしください。(弥)