熊本日日新聞掲載

11月 8, 2021

2021年10月15日付の熊本日日新聞朝刊の文化面に「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記」をご紹介頂きました。ありがとうございます!(弥)

塔本シスコ展

塔本シスコ(宇城市出身)東京で回顧展

50代で絵をは始め、団地の4畳半の自室で、童心にあふれる作品を描き続けた塔本シスコ(1913~2005)の過去最大の回顧展「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記」が、東京の世田谷美術館で開かれている。絵画を中心に陶器や人形など約200点を展示。“日本の素朴派”と言われる彼女の足跡を本格的に振り返る。同展は来年2月5日~4月10日に熊本市現代美術館に巡回する。

塔本シスコは八代市に生まれたが、生後すぐ養女に出され、養父が米サンフランシスコ移住を夢見ていたことから、シスコと名付けられた。本格的に絵を描き始めるのは夫と死別した後の、53歳の時だった。

世田谷美術館(東京)の「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記」は、日本の素朴派と言われる彼女の足跡を見渡す展示である。

会場冒頭で出会うのは着物姿の等身大のシスコ人形(?)。着物を埋め尽くす絵柄は彼女の手描きである。この埋め尽くすこと、キャンバスだけでなく着物をはじめ、空き箱にも瓶にも、しゃもじにも、およそ何にでも描いたことが彼女の「かかずにはいられない!」性向をまずもって表している。加えれば、相当な色彩家であることも分かる。

養家の斜陽で小学校を4年で退学。子守や農作業など家の仕事を手伝った後、酒屋などの家に奉公に。20歳で結婚するが、料理人だった夫は事故で亡くなる。その夫が存命中から庭で育てた動植物を描いていたらしい。

しかし「私も大きな絵ば描きたかった」。画家を目指していた息子が実家に残したキャンバスの絵の具を削って、その上に自分の絵を描き始めた。

自在な境地が花開くのは息子と同居するため、70年に大阪に移ってからだろうか。身近な家族や動植物。モチーフは珍しくないのだが、上下左右どこから見てもいいアングルや、孫と幼いころの自身を同じ画面で遊ばせるなど時空を超えた自由さはまさにナイーブ。

しかも、そのタッチは粗雑ではない。ひと筆ひと筆、何かを確かめるよう丹念に画面を埋めている。描かれるのは楽しかった思い出。過酷だった日々に上書きするように。描くことで生きた、そんな作品群である。

熊本市現代美術館の担当学芸員・坂本顕子さんは「生命力や自由さ、光と色彩に満ちあふれる作品は、故郷の懐かしい風景と、植物や生き物、人間たちが等しく存在する世界を描いた。それらはコロナ時代を生きる私たちに癒しを与えると同時に、彼女の生き方は何かを始めるのに『遅すぎることはない』と励ましてくれる」と話している。

 

 

 

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