熊本市現代美術館所蔵 ふるさとの海

4月 2, 2015

本日は、熊本市現代美術館 ギャラリーIII. Vol.102 CAMKコレクション展「抽象/自然」にて展示中の「ふるさとの海」(1992年)という絵をご紹介します。

ふるさとの海 塔本シスコ

塔本シスコ 「ふるさとの海」1992年 熊本市現代美術館所蔵

この絵は昭和初期頃の宇城市松橋町東松崎の様子を描いています。

画面中央上に描かれている家がシスコの古里です。ハスの花がいっぱい咲いており、レンコンを作っていた様子がうかがえます。

画面右側には天草から牛を乗せた船(天草 ベベン子丸・・・「べべんこ」は「子牛」の意味)が到着し、牛たちを降ろしているところが描かれています。シスコの家の井戸水はとてもきれいだったので、牛たちはここで水を飲んで休んだあと、歩いて熊本市内へ売られていきました。

画面中央下で漁をしているヒゲの男性がシスコの父です。隣には弟がいます。その後ろの船に乗っているのは親戚のおじさんとその息子です。主に、スズキの子どものセイゴを捕っていたようです。

白く、細かい波のように描かれているのは、干潟にたくさん生息しているアミです。大量のアミを食べに来る魚たちを捕っている様子が描かれています。

他にもボラ、コノシロ、トンパハゼなどが描かれています。

海水浴をしている人達やボートを漕いでいる人達がいますが、これは1940年(昭和15年)に開催される予定だった東京オリンピックのために、水泳やボートの競技を練習する人たちが描かれているのです。開催地が東京に決まった高揚感が、東京だけでなく熊本にも波及しているのですから、国全体がオリンピックに向けて盛り上がっていたことがわかります。

残念ながら、日中戦争が始まってこの東京オリンピックは幻となるのですが、この作品はその時代の空気や雰囲気を切り取った大変面白いものとなっています。

shisuko tohmoto

「ふるさとの海」制作中の塔本シスコ。四畳半の部屋で描いています。

また、シスコが故郷を描くときによく登場するのが、赤い鉄橋です。「ふるさとの海」では、画面左上に見ることができます。

他の作品では、「不知火海、魚取り、潮まねき」(1993年)の画面左上に三本の赤い橋脚が見えます。

shisuko tohmoto

 

さて、この赤い鉄橋、現在でもそのまま残っているのでしょうか?

宇城市を訪れた際、レンタカーで松橋町周辺を走ってみると・・・

ありました!!

shisuko tohmoto

 

シスコが描いていたとおり、赤レンガ造りの橋脚が3本あります。なかなか渋いガーター橋です。あいにく、天候が悪かったために暗く写っていますが、お天気の良い日は赤っぽく見えるに違い有りません。

宇城市不知火美術館の学芸員さんのお話によると、この鉄橋はかつて単線だった鹿児島本線の遺構だそうです。

シスコは生活の中で、日々、目の端で赤い鉄橋をとらえていたのでしょう。

熊本から遠く離れた大阪で故郷を思いながら描いた「ふるさとの海」、ぜひご高覧ください。(弥)

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熊本市現代美術館 ギャラリーIII. Vol.102 CAMKコレクション展「抽象/自然」
会期:2015年3月29日(日)~5月10日(日)

出品作家:中嶋一雄、川畑雅弘、田代順七、井出宣通、塔本シスコ、海老原喜之助、篠塚聖哉、長野良市、清原武則、宇野千里、林浩、神野大光、エネ・リス・ゼンパー、倉重光則、富永剛(15作家)

熊本市現代美術館(熊本市中央区上通町2-3) http://www.camk.or.jp/
休館日:火曜日
観覧料:無料

 

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